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2027年4月1日から、腎機能(血清クレアチニン検査)が健康診断の法定項目になります

9月9日
読了時間: 5分

更新日:9月10日

【この記事のまとめ】

 職域で行う定期健康診断の項目は、法律で定められています。2027年4月1日から、この項目に、これまでは含まれていなかった腎機能(血清クレアチニン検査)が新たに追加されます⁽¹⁾。腎機能と食事の関係について、あらかじめポイントを押さえておくことをおすすめします。食事で気をつけるポイントとしては、主に①食塩、②肥満、③タンパク質の3つです。




 職域における健康診断の検査項目は、法律で定められています。体重・身長をはじめ、Hb(ヘモグロビン)、血糖値、脂質項目などについても、法律によって検査が義務付けられています。義務を負うのは事業者であり、労働者に対して健康診断を実施し、その結果に応じて就業上の措置を行うことが求められています。


 この法律で定められた検査項目に、主に腎機能を評価するため、2027年4月1日から「血清クレアチニン値」という項目が追加されます⁽¹⁾。


 血清クレアチニン値とは、主に腎臓の機能を評価するための値です。クレアチニンとは、代謝の結果として生まれる「ゴミ」のようなもので、この値が高ければ高いほど、腎臓の機能が低下している可能性があると評価します。


 腎臓は血液をろ過するフィルターのような役割を持っているため、クレアチニンが高いということは、腎臓のフィルターとしての機能が低下している可能性があると考えます。ただし、血清クレアチニン値はさまざまな要因の影響を受けるため、あくまで一つの目安として用います。


 さらに、通常は血清クレアチニン値から「eGFR」という値を算出し、腎機能を評価します。eGFRとは、血清クレアチニン値から推算される「腎機能の点数」のようなものです(本当は腎機能の点数そのものではありませんが、説明の際にはよくそのように表現されます)。eGFRは、正式には「estimated Glomerular Filtration Rate(推算糸球体濾過量)」といいます。先ほどの血清クレアチニン値に、性別と年齢を加えて計算されます。


 数値が高いほど、腎機能が良好である可能性が高くなります。eGFRは値によって5段階に分けられ、90 mL/min/1.73m²以上がもっとも良いとされる区分です。


 健康診断の項目に血清クレアチニン値・eGFRが追加されることで、職域に関わる皆様がこれらの数値に触れる機会は、間違いなく増えるかと思います。そのため、食事との関わりについても押さえておく必要があります。



 腎機能と食事の関わりについて、まず押さえておきたいポイントは、①食塩 ②肥満 ③タンパク質の3つです。


【1.食塩】


 食塩は、主に高血圧を介して腎機能にダメージを与えます。


 高血圧と食塩の関係については、本記事をお読みの方はすでによくご存じかと思いますが、食塩の過剰摂取は高血圧の発症リスクを高めます。


 高血圧はある日突然発症するのではなく、食塩の過剰摂取などによる影響が体に蓄積され、徐々に血圧が上がっていきます。高血圧は腎臓の繊細な血管を傷め、腎機能を低下させる原因になります。


 そのため、食塩の量や摂り方について指導する際には、高血圧の発症予防・重症化予防のための方法を参考にするのがよいでしょう。高血圧がなくても、食塩の摂取量は1日あたり6g以下にできると理想的です。


 また、腎機能障害が進んできた場合には、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』⁽²⁾なども参考にすることをおすすめします。



【2.肥満】


肥満も腎機能を障害する原因になります。


 主に過剰な脂肪や内臓脂肪が、腎臓の血管や腎臓そのものに負担をかけることなどが関係します。


 肥満ということは、エネルギー、つまりいわゆるカロリーの摂取量が多い状態であることが少なくありません。カロリーの摂取量が多い場合には、食塩の摂取量も多くなっているケースが多いため、先述した高血圧も助長することになります。BMI(Body Mass Index)を参考にした体重のコントロールがすすめられます。


 体重やBMIについては、今後あらためて記事にする予定です。先に学ばれたい方は、『肥満症診療ガイドライン』、または拙書(日本栄養大学出版部『内科医と管理栄養士が健康診断で伝えたかった食事の話』)などをご参照ください。



【3.タンパク質】


 タンパク質は、過剰に摂りすぎると腎機能を悪化させる原因になることがあります。タンパク質の摂取量が多すぎると、血液をろ過するフィルターともいえる腎臓に負担がかかり、腎臓の血管や糸球体に影響を与えるためです⁽²⁾。


 特に気をつけなければならないのが、すでにある程度、腎機能障害が進んでいる方です。タンパク質の摂りすぎによって腎臓がダメージを受けやすいのは、腎機能が正常な方よりも、すでに腎機能障害が進んでいる方であることが研究によって分かっています⁽²⁾。


 腎機能は、eGFRが90を下回ると低下している可能性があるため、個々のeGFRを確認するとよいでしょう。


 腎機能は低下していても、自覚症状がなかったり、腎臓についての通院歴がなかったりすることも多く、採血で調べなければ腎機能障害が分からないこともよくあります。「隠れ腎機能障害」ともいえるような方も、潜在的に多いといわれています⁽³⁾。


 腎機能障害を自覚していない方が、タンパク質を摂りすぎているケースもよくあります。特に、個人的に最近多くと感じるのが、プロテインを大量に摂っている方です。プロテインとは、もともとはタンパク質を意味する言葉ですが(=protein)、ここでは、タンパク質補給を主な目的とした健康補助食品やサプリメントのことを指します。実は腎機能障害があるにもかかわらず、それに気づかないまま、「健康に良い」と考えてプロテインを日常的に摂取している方は少なくありません。その結果、タンパク質の過剰摂取となり、腎機能に負担をかける原因になってしまう可能性があります。





 健康診断の項目に腎機能が追加されることによって、これまでのほかの健診項目と同様に、事業者にも腎機能の結果に対する適切な対応が求められるようになると考えられます。


 制度が施行される前に、ぜひ基本的なポイントを押さえておくとよいでしょう。




【参考文献】


(1)厚生労働省.「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」令和8年4月28日 基発0428第9号.(血清クレアチニン検査の追加、令和9年4月1日施行)


(2)日本腎臓学会 編.『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』東京医学社,2023.


(3)Uchida D, et al. Underestimating chronic kidney disease by urine dipstick without serum creatinine as a screening tool in the general Japanese population. Clin Exp Nephrol. 2015;19(3):474-480. doi:10.1007/s10157-014-1019-5.

 
 
 

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