昼食から始める、自然に健康になれる職場づくり
更新日:10月8日

先日、社員食堂を見学する機会があり、改めて感じたことがあります。社員食堂は、単に昼食を提供する場所ではなく、従業員の健康を毎日の食事から支える「職場の健康資源」だということです。
お手本になる食事を届ける
「給食は最高の教材」という言葉があります。健康的な食事について言葉で説明するだけでなく、実際に見て、食べてもらうことで、具体的なイメージを伝えられるという意味です。学校や病院で提供される給食も、望ましい食事の組み合わせや量を実際に示す役割を担っています。
職域における食育や栄養改善の取り組みでも同様です。健康診断の結果を受けて、「主食・主菜・副菜をそろえた適量の食事を食べましょう」と伝えても、社員食堂で提供される食事がその内容と大きく異なっていれば、実践にはつながりにくいでしょう。
社員食堂だけでなく、仕出し弁当でも同じことがいえます。価格を優先するあまり、スパゲッティにポテトサラダ、揚げ物に漬物といった、炭水化物や食塩が多く、野菜が少ない組み合わせになっている事業所はないでしょうか。
社員食堂の改善は有効なのか?
社員食堂の改善による健康効果については、まだエビデンスが確立しているとはいえません。ただし、職場の栄養改善策の一つとして有用である可能性を示す報告はあります。
例えば、社員食堂にスマートミール*を導入し、全メニューの減塩などを行った国内の事業所では、取り組み開始から1年後および2年後に、従業員の推定食塩摂取量と血圧が低下しました[1]。
*スマートミール:主食・主菜・副菜を基本に、野菜量、エネルギー量、食塩相当量などの基準を満たした、健康づくりに役立つ栄養バランスのよい食事のことです。
また、肥満または肥満リスクのある男性労働者を対象に、栄養教育、社員食堂でのヘルシーメニュー、栄養情報の提供を組み合わせた6か月間の介入を行った研究では、1年後の体重とBMIの減少が対照群より大きかったと報告されています[2]。
ただし、前者は対照群を設けていない一事業所での前後比較であり、後者も対象者数が少なく、栄養教育などを組み合わせた介入です。したがって、これらの研究だけを根拠として、「社員食堂の改善によって健康診断の数値が改善する」と断定することはできません。
一方で、職場の健康づくりプログラム121研究を統合したメタ解析では、BMI、腹囲、収縮期血圧、LDLコレステロール、果物・野菜の摂取量などに、小さいながら有意な改善が報告されています[3]。ただし、この結果も社員食堂だけの効果ではなく、栄養教育、運動支援、食品表示、インセンティブなどを含む多要素型プログラム全体の効果を評価したものです。
以上を踏まえると、社員食堂や仕出し弁当の改善は、それだけですべての健康課題を解決するものではありませんが、職場における栄養改善の有力な選択肢の一つといえます。毎日のように繰り返される昼食を、健康的な食事を実践する機会として見直してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、社員食堂に健康的なメニューを用意しても、実際には選んでもらえないのではないか――そう感じた方もいるかもしれません。健康的な食事を自然に選んでもらうためには、価格、メニュー名、配置、量、見た目などにも工夫が必要です。この点については、別の機会にお伝えしたいと思います。
参考文献
[1]佐藤麻記子,坂口景子,武見ゆかり,丸山浩.保健所の特定給食施設指導を活用した勤労者の減塩の試み:埼玉県川越市内事業所での事例.日本公衆衛生雑誌.2024;71(8):408–417. https://doi.org/10.11236/jph.23-101
[2]Iriyama Y, Murayama N. Effects of a worksite weight-control programme in obese male workers: A randomized controlled crossover trial. Health Educ J. 2014;73(3):247–261. https://doi.org/10.1177/0017896912471038
[3]Peñalvo JL, Sagastume D, Mertens E, et al. Effectiveness of workplace wellness programmes for dietary habits, overweight, and cardiometabolic health: A systematic review and meta-analysis. Lancet Public Health. 2021;6(9):e648–e660.
文責 一般社団法人 日本職域栄養協会理事 榛葉有希
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