top of page

栄養相談・保健指導で大切にしたいこと

7月2日
読了時間: 4分

更新日:7月14日

本ブログでは、当協会理事3名が、職域で活躍される専門職の皆さんに対して、食事や栄養の支援を行う上で、知ってほしいことやポイントをお伝えしていきます。


初回となる今回は、理事の榛葉より「肥満は本人の責任だけではない」という考え方についてお伝えします。


皆さまは、「肥満スティグマ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

糖尿病の領域などで「スティグマ」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

ここでいうスティグマとは、疾患や体型に対する偏見や決めつけのことです。


肥満のある方は、医療や保健指導の場面だけでなく、職場や日常生活の中でも、「自己管理ができていない」「努力が足りない」といった目で見られてしまうことがあります。

こうした偏見は、本人を傷つけるだけでなく、必要な支援から遠ざけてしまうこともあります[1]。


日本肥満学会の『肥満症診療ガイドライン2022』でも、肥満症を持つ人の福祉の向上や、スティグマ解消に向けた社会的な取り組みに触れられています[2]。

もちろん、食事や運動などの生活習慣は大切です。しかし、肥満はそれだけで説明できるものではありません。


体質や遺伝的な要因も関わりますし、仕事内容、勤務時間、業務量、食事を調達できる環境など、本人の努力だけでは変えにくい要因も大きく関わります。

体重調節は本人の意思だけで完全に制御できるものではなく、生物学的要因、遺伝的要因、環境要因が関わることが指摘されています[1]。

たとえば、夜勤やシフト勤務、長時間労働、運転業務などによって、食事時間が不規則になりやすい方がいます。

実際に、日本人労働者を対象とした研究でも、交替勤務や夕食時間の不規則さが体重増加やBMIと関連することが報告されています[3,4]。


さらに、職場の近くに食事を買える場所が少ない、コンビニがあっても時間帯によっては商品が売り切れている、結果として菓子パンやおにぎりだけになってしまう、という方もいます。

健康的な食生活を実現するには、本人の努力だけでなく、健康的な食品を選びやすい食環境も重要です。

実際に厚生労働省も、「自然に健康になれる持続可能な食環境づくり」を進めています[5]。


こうした状況で、「もっとバランスよく食べましょう」と伝えるだけでは、現実的な支援にならないことがあります。

私はこれまで、管理栄養士として特定保健指導や栄養指導に関わる中で、こうした環境の中で悩まれている方に何度も出会ってきました。


以前、ある方に、

「これはあなたのせいだけではありません。仕事内容や業務量の影響も大きいと思います。よければ、また来年も来て、状況を教えてください」

とお伝えしたことがあります。

そしてその方は、涙を流されました。


きっとそれまでに、「自分が悪い」と感じさせられる場面が多かったのだと思います。


栄養相談や保健指導では、食事や生活習慣の改善を支援することが大切です。

ただし、それと同じくらい、「本人を責めないこと」も大切です。


目の前の方が変えられることと、変えにくいことを一緒に整理する。

できていないことを指摘するだけでなく、その人が置かれている環境にも目を向ける。

そして、必要なときには「あなたのせいだけではありません」と伝える。


その一言で、ようやく次の相談につながることもあるのではないかと思います。

肥満のある方への栄養相談や保健指導では、ぜひこの視点を大切にしていただければうれしく思います。


【参考文献】

[1]Rubino F, Puhl RM, Cummings DE, et al. Joint international consensus statement for ending stigma of obesity. Nature Medicine. 2020;26:485-497.

[2]日本肥満学会編.肥満症診療ガイドライン2022.ライフサイエンス出版,2022.

[3]Suwazono Y, Dochi M, Sakata K, et al. A longitudinal study on the effect of shift work on weight gain in male Japanese workers. Obesity. 2008;16(8):1887-1893.

[4]Nakamura M, Miura A, Nagahata T, Toki A, Shibata Y, Okada E, Ojima T. Dietary intake and dinner timing among shift workers in Japan. Journal of Occupational Health. 2018;60(6):467-474.

[5]厚生労働省.自然に健康になれる持続可能な食環境づくり.

――――――――――

発行:一般社団法人 日本職域栄養協会

文責:榛葉有希(理事)

公開日:2026年7月2日

本ブログの内容を引用・転載される場合は、出典を明記のうえ、事前に当協会までご連絡ください。

――――――――――



 
 
 

コメント


 

Copyright(C) 2026 by 日本職域栄養協会(JONA)

bottom of page